5. 企画プロセス② 問題発見

このセクションでは、

企画立案のセカンドステージである「問題発見」について説明します。

問題発見は企画立案プロセスの中でも重要なパートです。

特に、隠された問題、まだ認識されていない問題を発見した時は

企画立案の7割を終えたといっても過言ではありません。

目次

問題の発見とは

問題発見は「データ収集」と「分析」で行います。

1→10の企画を学んだ時、このタイプの企画はデータの比較が重要であることを学びました。

データを比較するためには、たくさんのデータを集める必要があります。

データを集めたら比較や分析を行い、企画のゴールの前に立ちふさがる障害が何かを特定します。

つまり、問題発見とはゴールの実現を邪魔するモノ・コトをことです。

問題発見の4ステップ

データの収集と比較・分析についてもう少し細かく説明しましょう。

ここでは、「データ収集」と「分析」による問題発見を以下の4つのステップに分けて考えます。

第1のステップは「データ収集」

第2のステップは「情報を整える」

第3のステップは「比較する」

第4のステップは「差(ギャップ)」

データ収集

データはデータの種類と信頼度を見極めて集めることが大切です。

データの種類とは、

  • 定量データ
  • 定性データ 

データの信頼度とは、

  • 信頼度の高いデータ
  • 信頼度の低いデータ 

定量データとは数値化できるデータのことです。

商品ならカタログに記載されているスペック表の数字ですね。

定性データは数値化できないデータです。

例えば、ユーザーコメントなどです。

信頼度の高い定量データは

  • 企業の公式情報(HPやカタログなど)
  • 官公庁情報(白書)
  • マスメディア情報(新聞、雑誌)
  • 書籍情報(専門誌)
  • 学術情報(論文)などです。

これらはデータの出所がハッキリしていて、専門家が関わっている精度の高いデータです。

信頼度の低い定量データは

  • WEB情報(ブログ、wikipedia、SNS、YouTubeなど)

WEB情報の中にも信頼度の高い情報はあります。

  • 企業の公式情報(HPやカタログなど)
  • 官公庁情報(白書)

以上はWEBでも閲覧できる、比較的信頼度の高い情報です。

また、Googleスカラーという学術文献検索サイトを使うと

論文などの学術情報を簡単に検索できます。

出典を確認する

問題は、情報やデータの出典を確かめずに思い込みで記事にしたり、企画のエビデンスに使ってしまうケースです。

例えば、以前、こんなことがありました。

動画の企画書を書いていて

動画がテキストコンテンツよりも優れているというデータを探しました。

すると、

3分間のビデオは180万語に値する

という名言を発見しました。

わかりやすくてインパクトのあるフレーズです。

あなたも「3分間のビデオは180万語に値する」で検索してみてください。

たくさんのサイトやブログがヒットします。

これはいいや!と思いましたが、気になることがありました。

情報の出典が曖昧なのです。

出典が明記されていないか、「米国のある研究によると・・」という表記があるのみ。

でも、「3分間のビデオは180万語に値する」という言葉は一人歩きしていて、日本語のサイトやブログでたくさん使われているのです。

日本には出典の曖昧さを疑う人はいませんでした。少なくともWEB検索したレベルでは。

そこで、どうしたかというと、「3分間のビデオは180万語に値する」をGoogle翻訳で英訳して、それを検索にかけます。

すると該当する英語のページがヒットしました。

検索上位のページにこんなことが書いてありました。

そのページよると出典はジェームズ・フォレスター博士によるフォレスターリサーチによる研究「ビデオが世界をどう引き継ぐか」だそうです。そこに「3分間のビデオは180万語に値する」と書いてあるようです。

ただし、このページの著者は、「3分間のビデオは180万語に値する」は魅力的なフレーズだけど、180万語はブリタニカ百科事典3巻に匹敵し、さすがに3分の動画にそこまでの情報量はないだろうと書いてあります

英語には「絵は千語の価値がある」という慣用句があり、これをもじった言い回しだろうということです。180万語という数字に科学的根拠はなく、ただ、動画はテキストよりもたくさんの情報量を伝えることができるとアピールしたかったのだろうということです。

これはブログに書いてある数字を鵜呑みにしてはいけないという事例です。

信頼度の低いデータはそのまま使わないことをおすすめします。

WEB情報の扱い方

では、WEB情報などは無視した方がいいか?というとそういうわけでもありません。

WEB検索は手軽だし、コストをかけずに色々な情報にアクセスできます。

僕はWEB検索を「データ収集の土地勘」を作るために活用します。

集めようとしているデータ、例えば「健康に関するデータ」だとしたら

WEB検索することでユーザーが健康に何を求めているか、ヒットした情報で見当をつけることができます。

また、amazonや図書館の検索機能を使うことで専門書を調べることもできます。

WEB検索は24時間365日、いつでも使えるので便利です。

注意すべきことは、信頼度の低いデータを、そのまま使わない!ということです。

情報を整える

集めたデータは比較できるように調整します。

調整や比較の仕方は、僕が企画を頼まれた時のことを事例として説明しましょう。

何年か前に、あるスナック菓子メーカーから依頼がありました。

その商品名を、名称を仮に「ポテワ」とします。

あくまでも仮の名称ですね。

この話は事実をもとに実際の商品が特定されないように

若干脚色してありますので、そのつもりでお聞きください。

ポテワはフライドポテトを輪っかのカタチにしたスナック菓子。

発売されて3年目、スーパーなどの店頭で販売されていましたが、

思うように売上が伸びませんでした。

そこでテコ入れして売上を伸ばそうとなり

企画を頼まれました。

まず、やったことは以下の5つのです。

  1. 依頼者との打ち合わせ
  2. 依頼者の作った資料の入手
  3. WEB検索
  4. 店頭チェック
  5. ユーザー調査

担当者との打ち合わせ&資料

まず、依頼をしてきた担当者と打ち合わせをします。

担当者は企画を立てるために、対象商品に関する資料をつくていました。

打ち合わせと資料からわかったことは

その商品の特徴と商品データです。商品データとは容量や価格などのことです。

特徴には「じゃがいもベースのスナック菓子」「チーズフレーバー」「主婦のための大人のスナック菓子」というコンセプトや目標、現実の売上などについて担当者が作った資料からわかりました。

WEB検索

WEBで検索しながら、じゃがいもを使ったスナック菓子で競合する商品を調べました。

競合商品には、僕も子供の頃に食べたことのある大ベストセラー商品がありました。

また、amazonでも「ポテワ」や競合商品をチェックしました。

amazonのようなECサイトで確認するのはユーザーコメントです。

ユーザーが商品に対してどんな評価をしているのか、感想を持っているのか、ユーザーレビューを見ることでわかります。

エクセルで情報の整理

データや情報を収集したら、僕は、エクセルを立ち上げます。

別にエクセルでなくても良いのですが、

集めたデータを比較できるように調整して表にします。以下はその例です。

商品名 (企業名)
ポテワ

商品A

商品B


特徴




価格など




サイズ




試食




ユーザーレビュー




店頭の状況




例えば、表の左縦に

  • 商品名
  • 特徴
  • 価格など
  • サイズ
  • 試食
  • ユーザーレビュー
  • 店頭の状況

という項目をつけます。

商品名にはポテワ、競合商品A、競合商品Bというように書き込みます。

そして、集めたデータを該当する箇所にいれていきます。

こうしてエクセルでまとめる目的は、

比較できるようにデータを調整することです。

世の中にある情報は、それぞれのスタイルやフォーマットでデータを発信しているので、それだけでは比較することができません。

データを表に並び替えて比較できるようにすることで

時には、今まで見落としていたよう新しい発見をすることができます。

比較する

「ポテワ」の事例で比較について説明しましょう。

商品の特徴

商品の特徴をみると「ポテワ」は「主婦のための大人のスナック菓子」。

競合商品はスナック菓子のベストセラーで子供から大人まで幅広い世代に支持されています。

価格など

商品の価格はポテワが競合商品とほぼ同じです。

カロリーもほぼ同じでした。

サイズ

ただし、容量はポテワの方がやや少なめ。

試食

商品を購入して試食した感想を記入します。

ポテワに関しては、

チーズ感が強くワインやビールのおつまみでも行けそうな感じでした。

確かにスナック菓子にしては子供ではなく大人向けの味。

量的には少し物足りない感じ。

といった感想です。

競合のベストセラー商品は

子供の時に食べた味と同じ。

おやつによく食べたな、とか、

友達が遊びに来た時、お袋が

ジュースと一緒に出してくれたな、など

当時のことを思い出し、なつかしさを覚えました。

ユーザーレビュー

amazonなどのユーザーコメントデポテワをみると

「ビールのおつまみにピッタリ」と書いてあり試食感想と一致。

「チーズのフレーバー感が物足りない」などとも書いてありました。

競合商品は

「安定のおいしさ」「家族で食べるのでまとめ買いします」

などのユーザーレビューがありました。

店頭の状況

何軒かスーパーに足を運び、ポテワの店頭状況を確認しました。

店頭での撮影は禁止されている場合が多いので、

しばらく商品が並ぶ棚のそばで観察します。

まず、ポテワの商品スペースの確認です。

スーパーの客の視線が届きやすい場所、手を出しやすい場所にあるか。

それから商品スペースは広いか、などです。

お店はいろいろと考えて商品を販売する位置やスペースを決めています。

店頭は商品と店とお客様の接点であり、テキスト化や数字化されていない

生きたデータが眠っている場所です。

店頭を観察して、貴重な情報を手に入れましょう。

ポテワの場合、わかったことは

お菓子売り場の一角にあるスナック菓子コーナーで販売されていました。

残念ながら、ベストセラーの競合商品に追いやられて、すみの方にあり、

スペースも小さいものでした。

15分ほど観察しましたが、スナック菓子を買う人そのものが多くなく、

数分に一度買われるのはベストセラーの競合商品でした。

観察したのが平日の午後だったこともあり、

小さい子供をつれたお母さんが買っていきました。

表に基づく以上の比較から分かるのは

  • 価格やカロリーはポテワも競合商品もほぼ同じ。
  • 容量はポテワがやや少ない。
  • ポテワは「お酒のおつまみにもよい」
  • 競合は「家族で食べる」
  • 店頭では競合が強い。ポテワはすみの小さなスペースで販売。

ということです。

差(ギャップ)

比較してわかったことから「差(ギャップ)」を見つけます。

イメージとしては図のように商品Aと商品Bを並べて「差」を確認するやり方です。

ポテワの場合、競合商品と比べても価格・カロリーはほぼ同じ。

大きな差は、試食やユーザーレビューにでた「お酒のつまみによい」と「家族で食べる」という点。

競合商品は「おやつ」感覚が強いということがわかりました。

ポテワの商品コンセプトが「大人のスナック菓子」なので、この結果は当然の差です。

しかし、これが問題になるのは、子育て中の主婦が子供のおやつを買うために訪れるスナック菓子のコーナーで家族向けの競合と並べて販売されていること。

つまり、「差(ギャップ)」は、大人向けスナック菓子なのに子供のおやつ売り場で販売されていること、となります。

この「差(ギャップ)」が、この企画の問題となります。

まとめ

問題の発見をおさらいしてみましょう。

このように情報やデータを集め、

表にできるように情報を整えて、

比較をして「差(ギャップ)」の大きい部分を見つける。

その「差(ギャップ)」が問題である。

このようなやり方で、誰も気づかなかったような

商品が抱える問題を炙り出すことも可能です。

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